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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)544号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(申立)

一、控訴人 「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人〓原八千代は金一五九万五、〇〇〇円と内金二二万三、〇〇〇円に対する昭和三〇年三月二五日から完済まで年五分の割合による金員を、その余の被控訴人らは各自金一〇六万三、三三三円三三銭と内金一四万八、六六六円六六銭に対する昭和三〇年三月二五日から完済まで年五分の割合による金員を、それぞれ、亡〓原義郎の相続財産の限度にかゝわらず、控訴人に対し支払え、訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決、および仮執行の宣言を求める。

二、被控訴人ら 主文第一項と同旨の判決を求める。

(主張、証拠)

当事者双方の主張、証拠の提出、認否等は、控訴人において当審における被控訴本人〓原八千代尋問の結果を援用したほか原判決の事実摘示に記載するとおりであるから、これを引用する。

理由

一、当裁判所も、原審と同様に、控訴人の本訴請求は、原審の認容した範囲において理由があり、その余は失当であると判断する。その理由は、左記のほか、原判決の理由に記載するとおりであるから、これを引用する。

1、原判決一三枚目表(記録六八丁)一一行目「前訴第二審口頭弁論終結時」の後に「(成立に争いのない甲第二号証によると、右終結時は昭和三九年一月一八日であることが明らかである。)」を加え、

2、原判決一四枚目表(記録六九丁)六行目「前訴の経過」の後に「および成立に争いのない甲第一、第二号証、乙第八号証の三、四」を如え、更に同一〇行目一一行目の「請求棄却の判決を受け」の後に、「この遅延損害金の請求を棄却された部分については、控訴人から不服申立がなされなかつたため、前訴の第二審においてはこの点についての審理判断がなされないまゝ判決が言渡されたことが明らかであり、この判決に対する上告がいずれも棄却されたことは前記のとおりである。してみれば、前訴で請求された前記の三三三万一、〇〇〇円に対する昭和三〇年三月二五日以降年五分の遅延損害金の請求権は、存在しないものとして確定したといわなければならない。そして」を加える。

原判決一四枚目表一〇行目一一行目の「請求棄却の判決を受け」の後から、同裏三行目の「不存在と確定したものであり」までを削る。

3、原判決一六枚目表(記録七一丁)三行目の「遅延損害金を支払うべき」の後に、「である。そして、否認権行使の場合の現物返還にかわる償還金についての遅延損害金は、否認の対象とされた行為の日から発生すると解すべきところ、前記甲第一、二号証によれば、控訴人主張の本件否認の対象である代物弁済(安来宏一の亡〓原義郎に対する代物弁済)およびこれを原因とする所有権取得登記が完了したのは昭和三〇年三月二五日であることが明らかであるから、被控訴人らは、控訴人に対し、前記の各金員に対する昭和三〇年三月二五日から完済まで年五分の割合による遅延損害金をそれぞれ、相続財産の限度において支払うべき義務がある。しかしながら、控訴人は、原判決中前記の各金員に対する昭和三九年七月二日以前の遅延損害金の請求を棄却した部分については不服申立をしていないので、当裁判所は前記の遅延損害金の請求については原審の認容した限度においてこれを認容することとする。よって」を加える。

原判決一六枚目三行目の「運延損害金を支払うべき」の後から、同一〇行目の「義務があるとすべきであり」までを削る。

二、よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九五条を適用して、主文のとおり判決する。

三、なお、記録によれば、原判決は昭和四五年三月二日原審原告(控訴人)の訴訟代理人大崎康博に送達されたところ、控訴人は、同月六日、原審被告のうち〓原八千代、同達郎、同剛を相手方として当裁判所に控訴申立をしたが、原審被告の一人である山田義恵に対しては控訴申立をすることなく控訴申立の期間を徒過したことが明らかである。

この事実によれば、原判決のうち原審原告吉永多賀誠と原審被告山由義恵に関する部分は、控訴期間の徒過により、すでに確定したものといわなければならない。

控訴人は、控訴期間の徒過後である昭和四五年七月一三日受付「控訴状補正申立」と題する書面を当裁判所に提出し、前記の〓原八千代ほか二名に対する控訴状作成の際に原審被告山田義恵を相手方として記載するのを脱漏したと主張し、これを理由に同被告を被控訴人として取り扱われたい旨申し立てるが、原判決中原審被告山田義恵に関する部分がすでに確定していることは前記のとおりであるから、この申立の理由のないことは明らかである。なお、東京控訴院昭和二年一一月一五日判決(法律新聞第二七八〇号七頁)は控訴状に被控訴人の氏名の表示を遺脱した事案について当該控訴を適法としているが、この判決は旧民事訴訟法第四〇一条(大正一五年法律第六一号により現行民事訴訟法第三六七条のとおり改正)について示された見解であつて、現行民事訴訟法の解釈としては適切ではない。

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